豊かな暮らしを手に入れるため、家づくりを検討する方が多いと思います。
しかし、一歩間違えば快適とは正反対、体調を崩したり病気になったりする恐れがあります。
それがシックハウス症候群です。
今回は、シックハウス対策の家づくりについて、化学物質過敏症の私の体験談を踏まえてお話します。
大前提、化学物質過敏症の方は、注文住宅はおすすめしません。
しかし、どうしても注文住宅があきらめきれない方向けにお話しします。
- まずは自分(家族)の症状の発生源を絞る
- 住宅メーカーに行き、症状が出ないか試してみる

そもそもシックハウス症候群とは
新築住居によって、めまいや頭痛、呼吸器疾患などの症状が出ることを言います。
家を建てた際の建材に使われる接着剤や塗料、防腐剤に含まれるホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)が原因とされています。
人によって症状が違い、原因物質も異なります。
なんとなく体調が悪い
目がちかちかして吐き気がする
その症状、シックハウスかもしれません。
化学物質過敏症の方やその他アレルギー体質の方は、VOCに対しても敏感かもしれません。
化学物質過敏症やシックハウス症候群の方、またはその疑いがある方は、住宅メーカーの話は鵜吞みにせず、きちんと自分で調べてから、家づくりを検討するべきです。
住宅メーカーのシックハウス対策は不十分かも?
今やどこのメーカーもHPにて、シックハウス対策について触れられていると思います。
営業さんも、「うちは対策しています」と言うでしょう。
しかし、よく聞いてみると、
F☆☆☆☆(エフフォースター)の建材を使っているので対策してます
良くても、
無垢の床、自然素材の壁紙も選択可能です
という話がほとんどでした。
これは本当に「あなたにとって」対策済みなのでしょうか。
F☆☆☆☆の落とし穴
皆様はF☆☆☆☆という言葉、聞いたことがあるでしょうか。
F☆☆☆☆(エフフォースター)とは
住宅の1995年にシックハウスと命名されてから30年。
国土交通省は平成15年に建築基準法を改正し、シックハウスの原因の一つとされるホルムアルデヒドの制限を行いました。
それぞれの建材に対して、ホルムアルデヒド放散速度によって、制限を設けるというものです。
星が4つのものが最高基準、表示がないものは使用禁止となっています。
JIS・JAS表示 | 放散速度基準 | 使用面積制限の有無 |
---|---|---|
F☆☆☆☆ | 0.005mg/㎡h以下 | 制限なし |
F☆☆☆ | 0.005mg/㎡h以上0.02mg/㎡h以下(夏季において) | 制限あり (換気量によって量は異なる) |
F☆☆ | 0.02mg/㎡h以上0.12mg/㎡h以下(夏季において) | 制限あり (換気量によって量は異なる) |
表示なし | 0.12mg/㎡h以上(夏季において) | 使用禁止 |
(参照:国土交通省|第一種ホルムアルデヒド発散建築材料を定める件)
国土交通省|第二種ホルムアルデヒド発散建築材料を定める件)
国土交通省|第三種ホルムアルデヒド発散建築材料を定める件)
現行の建築基準法では、F☆☆☆☆は使用面積が「制限なし」となっています。
どういうこと
言い換えれば、「F☆☆☆☆だったら、いくら使ってもいいですよ。」ということです。
ホルムアルデヒドを含む建材
残念ながら、家づくりにおいてホルムアルデヒドを含む建材は欠かせないものとなっています。
- 合板、集成材、フローリングなどの接着剤
- 壁紙を張る接着剤
- 断熱材
- 塗料
- 家具
いたるところで使われています。
それぞれから発されるホルムアルデヒドが微量であっても、集まれば濃度も高くなってしまいます。
VOCはホルムアルデヒドだけではない
厚生労働省によると、シックハウスとなりうる原因物質は13物質あり、今後も増える可能性があります。
揮発性有機化合物(VOC) | 毒性指標 | 室内濃度指針値 | 指針値の設定日 (改定日等) |
---|---|---|---|
ホルムアルデヒド | ヒト吸入曝露における鼻咽頭粘膜への刺激 | 100μg/m3 (0.08ppm) | 平成9年6月13日 |
アセトアルデヒド | ラットの経気道曝露における鼻咽頭嗅覚上皮への影響 | 48μg/m3 (0.03ppm) | 平成14年1月22日 |
トルエン | ヒト吸入曝露における神経行動機能及び生殖発生への影響 | 260μg/m3 (0.07ppm) | 平成12年6月26日 |
キシレン | ヒトにおける長期間職業曝露による中枢神経系への影響 | 200μg/m3 (0.05ppm) | 平成12年6月26日 (平成31年1月17日) |
エチルベンゼン | マウス及びラット吸入曝露における肝臓及び腎臓への影響 | 3800μg/m3 (0.88ppm) | 平成12年12月15日 |
スチレン | ラット吸入曝露における脳や肝臓への影響 | 220μg/m3 (0.05ppm) | 平成12年12月15日 |
パラジクロロベンゼン | ビーグル犬経口曝露における肝臓及び腎臓等への影響 | 240μg/m3 (0.04ppm) | 平成12年6月26日 |
テトラデカン | C8―C16混合物のラット経口曝露における肝臓への影響 | 330μg/m3 (0.04ppm) | 平成13年7月5日 |
クロルピリホス | 母ラット経口曝露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 | 1μg/m3 (0.07ppb) 但し小児の場合は0.1μg/m3 (0.007ppb) | 平成12年12月15日 |
フェノブカルブ | ラットの経口曝露におけるコリンエステラーゼ活性などへの影響 | 33μg/m3 (3.8ppb) | 平成14年1月22日 |
ダイアジノン | ラット吸入曝露における血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響 | 0.29μg/m3 (0.02ppb) | 平成13年7月5日 |
フタル酸ジ―n―ブチル | ラットの生殖・発生毒性についての影響 | 17μg/m3 (1.5ppb) | 平成12年12月15日 (平成31年1月17日) |
フタル酸ジ―2―エチルヘキシル | ラットの雄生殖器系への影響 | 100μg/m3 (6.3ppb)(注1) | 平成13年7月5日 (平成31年1月17日) |
総揮発性有機化合物量(TVOC) | 国内の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定 | 暫定目標値 (注2) 400μg/m3 | 平成12年12月15日 |
(参照:厚生労働省「R7室内濃度指針値」)
建築基準法では、規制はクロルピリポリス(使用禁止)とホルムアルデヒドのみとなっています。
- ホルムアルデヒドの揮発量自体に規制がかかっていない
- そのほかの原因物質は規制がかかっていないものが多い
つまり、
建築基準法の対策だけでは、敏感な人にとっては不十分なのです。
実際、私はF☆☆☆☆でも喘息の症状が出ます。
実家で暮らしていたときの話です。
兄弟が大きくなり、4月に子供部屋を分けた際、F☆☆☆☆の間仕切り戸を使用しました。
半年ほどは喉が乾燥する程度の症状でした。
しかし、冬場に窓を閉めて生活していると、2週間で喘息症状が出ました。
そこから5年、私はその部屋は使うことができませんでした。
私の家族はシックハウスではなかったのですが、その部屋にいると喉がイガイガしたそうです。
結局、戸をラップでぐるぐる巻きにして放散量を抑えていました。
ハウスメーカーに見学に行った際にも、入っただけでホルムアルデヒドの臭いがするモデルハウスや、喉がイガイガする部屋がありました。
しかし、営業さんにはF☆☆☆☆の建材で建てていると言われました。
自然素材を用いれば安全か?
- 床を無垢材に
- ビニールクロスの代わりに紙クロスを
私は良くこれらを提案されました。
自然素材を用いると、VOCの放散量は幾分かましになると思います。
しかし、その対策だけで十分かは分かりません。
集成材の梁や柱が見えている場合、そこから放散します。
ドアもきれいに見せるために化粧板が貼ってある場合もあります。
紙クロスといえど、壁に用いるで接着剤にホルムアルデヒドが含まれている可能性もあります。
家づくりに接着剤、塗料が欠かせない中で、自然素材=安全とは決して言えません。
そこで、まずは自分の症状を自分で把握する必要があります。
自分の症状について知る
私の場合、濃度が濃いとすぐに軽い症状が出ます。
モデルハウス訪問の際に症状が出れば、そのメーカーは候補から外していけばよいのですが、濃度によっては症状が出るのに時間がかかる可能性もあります。
また、人によっては症状が出るまで数週間かかる方もいると思います。
自分がどの物質で反応しているのか知ることが近道です。
自分の原因物質を特定する
一番良いい方法はこれです。
しかし、難易度が高いです。
アレルギー科を受診することになりますが、シックハウス症候群を見てもらえる場所は限られています。
また、受診できたとしても、症状改善の治療をしてもらうところがほとんどです。
「家を建てたいから、受診したい。」では受け入れてもらえません。
さらに、通常の血液検査やパッチテストでは、シックハウス症候群の原因物質の特定はできません。
室内の原因物質を特定する
現在症状が出ている方は(アレルギー科の受診とともに)、室内空気測定分析が有効な方法です。
シックハウスの原因だと予想される部屋の空気を調べ、室内のVOC量を調べてもらうことができます。
VOCの検査には主に2種類の方法があります。
①パッシブ法(拡散法)
一定時間吸着剤を室内に放置してVOCを吸着させる方法です。
少し時間はかかりますが、測定器を必要とせず、気軽に採取可能です。
申し込むと採取セットが送られ、分析結果はのちに送られます。
②アクティブ法(吸引法)
ポンプ等を用いて空気中の化学物質を吸引し、集めます。
短時間の測定が可能なのがメリットです。
現地にスタッフが赴いて測定するので、値が張ります。
私は、パッシブ法を用いて実家の子供部屋を測定してもらいました。
その結果がこちらです。

私が家づくりをする前に原因物質を特定しようと行ったもので、私がシックハウスを発症してから10年ほど経過していました。
当時このような検査方法があると知っていれば、もっと詳しく分かったかもしれません。
しかし、10年たってもなお、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが検出されました。
当時は、より濃度が濃かったことが予想されます。
VOCの検査結果より分析する
私は現在は実家に帰っても喘息症状が出ません。
つまり、私の場合、
- ホルムアルデヒドは15μg/m3以下
- アセトアルデヒド8μg/m3以下
- その他VOCが検出されない
であれば、症状が出ないことが分かります。
完ぺきに原因特定とまではいかないまでも、ある程度目安をもってハウスメーカーで打ち合わせをすることができます。
VOCの平均測定値を教えてくれるハウスメーカーも
私が見学に行ったハウスメーカー、工務店の中には、VOCの測定実績がある会社がありました。
その中で、自分の基準値以下のものがあれば、ハウスメーカー選びの大きな助けになるのではないでしょうか。
ちなみに全邸VOCを検査している会社は、工務店2社だけでした。
VOCが測定できない、測定してもわからない
この場合は数を打つしかありません。
営業さんと相談しながら、症状が出ないかどうか確認してみましょう。
決して無理のない範囲で段階を踏んで確認してみてください。
モデルハウスで話を聞く
モデルハウスに予約をして営業さんと打ち合わせをしてみましょう。
1時間~2時間はその場で過ごすことになります。
隅々まで見学し、締め切られた場所(トイレ、脱衣所など)で深呼吸してみましょう。
普段締め切っている場所はVOCが残留している可能性があります。
その段階で違和感があれば、体質があっていないのかもしれません。
症状が出ない場合は、築何年のモデルハウスか確認しましょう。
引渡し前見学会に参加する
モデルハウスで症状が出た場合でも、まだチャンスはあります。
置いてある家具がホルムアルデヒドを発していて、そこに反応しているだけだったかもしれません。(家具からも結構出ています。)
引渡し前の見学会は、家具もほとんどない状態で、新築の見学ができます。
ここで症状が出る場合は、残念ですがそのメーカーは諦めるほうが無難です。
また、「あの部屋は大丈夫だったけれど、この部屋はだめ。」といったことがあると思います。そうなったらチャンスです。
部屋の中の疑わしい建材を営業さんに尋ねましょう。
私の場合、フロアタイルでは症状がひどく、無垢床の場合は症状が出にくいことがわかりました。
家を建てる際、使っていい建材、避けるべき建材がなんとなくわかります。
OB宅の見学会に参加する
引渡し前見学会がない場合は、OB宅見学会に参加しましょう。
できれば築の浅い物件で、自然素材を使っているOBのおうちが良いと思います。
症状が出ない場合は、極論、その家と同じ建材を使ってしまえば大丈夫だということになります。
そのOB様の家が、自分たちの好みと全く異なるおうちであった場合、同じ建材を使うというわけにはいきません。
あくまで見学会は、自分たちの好みに合う家に行くことをお勧めします。
お泊り会に参加する(あれば)
モデルハウス宿泊会を開いている会社もあります。
1泊2日、その家の空気に触れることができます。
開催しているようであれば、ぜひ参加してみましょう。
自然素材を取り扱うメーカーは数多くありますが、意匠性、理念(自然と調和した家づくり等)として扱っている場合もあります。
性能特化の会社も、性能=断熱・気密性能を指すこともあります。
シックハウスに特化している会社は、なかなか存在しないことを念頭に探してみてください。

まとめ
シックハウス症候群・化学物質過敏症だけれどどうしても、注文住宅を建てたい場合、
- 現行の建築基準法では、対策が不十分
- まずは自分の症状の発生源を絞る
- VOC検査をするのがおすすめ
- 症状を理解してくれる住宅メーカー、営業さんと打合せする
- モデルハウス見学やOB宅見学、引渡し前見学に積極的に参加する
揮発性有機物によって症状が出る方は、1社を検討するのにすごく時間を要します。
しかし、何より1番大切なのはあなたの健康と生活です。
症状が出て住めなくなったとしても、ハウスメーカーも営業も責任を取ってくれません。
大きなお金をかけて買うのですから、失敗したくないですよね。
契約後に不安を残さないよう、検討には必要な時間をかけてみてください。
少しでも家づくりがスムーズに進むよう、参考にしていただけたらと思います。